遙と玲の二人は一頻り抱き合った後、校舎の一角に身を屈めた。
棟の白い壁に背を預け、遙は植木が茂らせる葉の隙間からのぞく、淡い月を見詰める。
潮騒のような、静かに囁かれる葉擦りの音。先程までの激闘と緊張が嘘のように、校舎全体が静謐な面持ちに沈んでいる。
遙と玲は暫く無言だった。淡く彩られた月光に身を委ねつつ、二人は互いの心を探るのが精一杯だった。昼間とは違った雰囲気に、おのずと身体が強張る。
初夏の涼やかな風が絶え間無く吹き続ける中、どれ程時間が経ったかは分からなかったが、玲が唐突に立ち上がった。
彼女は依然として座っている遙に向けて、軽くウインクを飛ばすと、左手に設けられた水場へと足早に向かい始める。
遙は目をぱちぱちとさせて、彼女の行動を見ていたが、玲は程無くして戻ってきた。その手には、水に濡らされたハンカチが握られている。
「ほら、遙……こっち向いて」
「え?」
遙は拍子抜けしたように、間抜けな返事をした。玲は少々溜息がちに、座る遙と視線を合わせる。
互いの視線が交わったその途端、遙の顔面にハンカチが思いっきり押し付けられた。急に感じた冷たさに、遙は玲の腕を引き離そうともがく。
しかし、遙の抵抗は空しく、玲は強引にも、ぐしぐしと容赦無く遙の顔を乱暴に拭った。
「っ!? むぐっ……むー!」
「もうっ! じっとしててよ。そんな血塗れで……そのまま家まで帰る途中に、他の人に見つかったら大変じゃない!?」
遙は玲の言葉で気付いたが、よく考えて見れば、自分の身体はチャドの返り血と自分の血で汚れてしまっていた。
せっかく純白を保っていたブラウスは派手に血飛沫を浴びて赤く染まっているし、背中側はチャドに引き裂かれたせいで夜風が直に当たる有様である。
遙は情けない顔立ちになって、玲の半ば乱暴ともいえる行動を受け入れていた。程無くして、玲はハンカチを持つ手を止める。
「ふぅ……こんな感じかな? ……あ、手もだね」
「い、いいよ……だって、それ、大事なものじゃないの?」
遙は玲のハンカチを指差す。すっかり血汚れで赤黒くなってしまたそれを、玲は抜けたような顔立ちで見詰めた。
「うん、まぁ、大事って程のものじゃないよ。何より、使わなきゃ損だしね。……ほらほら! それより、手を出して」
「……」
遙は渋々腕を差し出した。黒と碧の羽毛で包まれたそれは、明らかに自然発生した存在ではない。
やはり、相手が親友であろうと、『これ』を見られるのには抵抗があった。人間である玲と、獣人である自分との明確な違いが出ているような気がして……
だが、玲は何の抵抗もなくそれを握り返した。そして、暫く遙の獣腕をじっと見詰める。
「……」
遙の獣腕を渋面で睥睨する玲。遙は視線を泳がせ、何とか空白の場を埋めるために口を開いた。
「……え、えーと、玲――痛っ!!」
ぷちっ! と、細かいものが千切れる音がした。遙は腕に微かな痛みを感じて声を上げる。
良く見てみれば、玲が遙の羽毛を一つまみ程引き抜いているではないか。玲は引き抜いたそれを興味深げに見やる。
碧色に彩られた羽毛。遙の肌が変化したそれは、月光の当たり具合によって、鮮やかな淡緑色にも変化していた。
「……ふぅん……これって作り物じゃないんだ?」
「そっ、それはそうだよ! だって、ちゃんと私の肌が変化したものだし、感覚も……」
遙が言い終わる前に、玲はすでに遙の腕をハンカチで拭い始めていた。
異形と化したその腕を無造作に拭われつつも、不思議と嫌悪感は無かった。むしろ、どこか心地よさを覚える。
粗方血液を拭われ、遙の両手は、再び美しい碧色と漆黒の両色を取り戻しつつあった。遙は改めて自分の腕を視認し、その美しさに思わず見惚れる。
と……唐突に玲が手を止めた。遙は微かに眉を上げて、静かに目を瞬く。
「遙……私ね、こんな事言っていいのか分からないんだけど……」
玲は小さな声で、囁くように言葉を紡ぎ始める。遙は彼女の小さな言葉に、そっと耳を傾けた。
しかし――次の瞬間、玲は遙の両手をぎゅっと握り締め、その手に額を押し付ける。
「遙が生きていてくれて……良かった……」
「……え?」
思いがけない言葉。
遙は暫しの間、口をぽかんと開けたまま、声が詰まってしまった。
だが、玲が静かに顔を上げると、その青白い頬に光が伝っているのが見えた。憂えた顔立ちに、涙がその目尻から流れ落ちていたのである。
玲はその自分の感情の揺れを、自覚していなかったらしく、小さな声と共に慌てて涙を拭った。
「っ……ごめん、急に泣いたりして……」
「玲……」
遙は意識が現実に引き戻され、記憶の糸を辿る。
昼間、獣人化を必死の思いで押さえ込んだ後、玲と交わした会話。
先程のチャドの乱入で忘れかけていた事……そうだ。
「……今日の約束……」
遙は昂然と顔を上げた。その言葉に、玲が目を見開く。
「やっと果たせるよ……私の話……信じて……くれる?」
玲は無言のまま頷いた。眦を決した、強い光を宿す瞳。それを見た遙は、ゆっくりと深呼吸すると、かすかに震える声で話し始めた。
――――――――
「っと! 遙っ……! 何処だ!?」
ガークはようやく地面へと降り立ち、辺りを見回す。
見回す限りでは、周囲に人影は無く、ガークは訝しがりつつも、空を仰いで鼻をひくつかせた。
しかし、上手く匂いが掴めない。先程の強烈な血の匂いのせいで、ガークの嗅覚は半ば麻痺してしまっていたのだ。
その事に焦れつつも、暗闇に目を凝らしながら、ガークは右手の方へと足を進める。
明北高等学校は、校舎全体がいくつもの棟に分かれており、中庭側へ進入したガークは、その複雑さに頭を抱え込んでしまった。
渡り廊下を挟んだ中庭には、豊かな庭園風景が広がっているものの、今はそれが逆に視界と進路を遮る結果となってしまっている。
更に、遙とその友達の安否を気にするが故に、時折足元がぐらついたり、冷静な判断力が求められる今、焦燥感にそれが打ち消されかけていた。
「馬鹿……暗い事ばっかり考えてんじゃねぇよっ。いつも通りに動けばいいんだ」
暗い思考を振り払いつつ、中庭を潜り、等間隔で建てられている校舎の隙間を駆け足で通り抜けると、ガークはやがて、月光が降り注ぐ校庭へと飛び出した。
目の前に開けた眺望には、昼間に見つけた飼育小屋が……そして、自分の右手側の奥に、二つの影が座り込んでいるのが見えた。
「もしかして……遙……なのかっ?」
ガークは半笑いのような、何とも言い難い笑みを浮かべて、人影へと、より一層目を凝らしてみた。
……距離が離れている為、顔までは上手く視認出来ないが、二人とも見た目は明らかに獣人ではない。しかし、その内の片方のシルエットは、何処か見覚えがある気がする。
短い頭髪、そして、何よりも、その腕が証拠である。ガークは、ようやく感覚が戻り始めた嗅覚を駆使し、人間のものとは違う、獣の匂いが漂ってきたのを捕らえた。
――間違い無い。遙だ。
顔の確認は上手く出来ずとも、風に煽られてくる匂いから、間違いなく遙である事が窺えた。ガークは強張っていた頬を緩ませ、そっと溜息を吐く。
……どうやってあの高さから落ちて助かったのかと考えるよりも先に、どっと安堵感がこみ上げてきた。大事に思っている仲間の無事が確認され、彼は薄らと笑みさえ浮かべる。
「遙……まぁ、助かったのか」
ガークはニヤリと笑いつつ、遙の方へ行こうと足を進める。
何しろ、まだ敵がいないとは限らない。GPCの者達も、自分達の存在を隠蔽しつつ動くのだから、なるべく人気の多い所へ入る方が安全なのだ。
さっさと遙を家に連れ戻すつもりで、ズカズカと校内を闊歩するガークだったのだが、急に腹から遠雷のような音が響き渡る。
「うがっ!!」
唐突に腹部から競りあがってきた不快感。夕方頃に起きた食中りが再発したかのような出来事に、ガークはすっかり足を止めてしまった。
脳裏にフェリスの邪笑が浮かび、恐怖に身震いまでしてしまった。とにもかくにも、腹痛はおろか、吐き気まで催す状況である。
「ぐぇ! ……ちょ、ちゃんと遙に薬貰ったじゃないかっ」
明らかに夕方の腹痛の続きに、ガークは軽い悲鳴を上げて、あっさり踵を返す。
脳内情報の全てがトイレへ集中してしまい、遙の事すら一瞬吹き飛んでしまった。何しろ、この苦痛と比べれば、まともに敵とやり合ったほうがマシである。
頭の中が混乱しつつも、ガークは信じられない程のスピードで、学校を後にしようとしたのだが……
「ガーク」
「うおっ!? な、なんだ。フェリスか?」
細い裏道へと逃げ込もうとしたガークの眼前に、急に現れた長身の女性。その姿に、ガークは驚いたように喉を鳴らした。
嫌な思い出の集約した碧眼。しかし、薄らと光ったそれは、いつものように生気が無く、半目の状態である。
ガークはフェリスの顔をまじまじと見詰め、その姿を視認すると、怪訝そうに眉間へと縦皺を重ねた。
……彼女はつい先程まで、白衣の獣人少女と戦っていたはずである。そのフェリスがもう此処にいるという事は……
「……あの女……倒したのか?」
「まぁね、散々傷付けてあげたから、多分今日はもう襲ってこないよ。……それよりもガーク。駄目じゃない、今は遙に近付いた……ら」
突然、フェリスが言葉を詰まらせ、前へ大きくよろめいた。あまりにも急な出来事に、ガークは慌ててフェリスの身体を抱え込む。
「おいっ! どうしたんだよ!!」
「……やっぱり、ガークがお腹壊しててくれて良かったよ。本当にデリカシーが無いんだから。今は、二人だけにしてあげましょ……」
そう言うなり、フェリスは小さく息を吐き、完全にガークへ身体を預ける。
フェリスの体重がかかると同時に、ガークは右手に滑った感触を覚えた。不思議に思ったガークは自分の掌を見てみる。
……赤黒い血が付着していた。そして、濃い、血の匂いも。ガークの顔が引き攣る。
「まさか……フェリス。お前……」
身体に冷たい現実が突き刺さった気がした。
注意深く見回せば、フェリスの身体は満身創痍であった。鳩尾や脇腹を中心とした傷から、止め処無く溢れ出る血液。
その他にも微傷が端整な顔立ちのあちこちに見られ、そのどれもが塞がっている様子は無かった。
上位種の獣人ならば、有り得ない程に衰弱した自己治癒能力……恐らく、己の体力が枯渇するまで戦ったのだろう。
「お、おい!! しっかりしろよっ!! ……ったく! 遙よりも世話の焼ける奴だっ!」
ガークは自分の頭に巻いていたバンダナや纏っていたタンクトップを脱ぎ、フェリスの傷口にきつく巻き付けた。
出血だけでも止めなければ、獣人と言えど命の危険がある。簡単な止血をしたフェリスを背中へ担ぎ、ガークは辺りを見回した。
「ちっ……上司の言う事は聞け……か」
焦燥感が胸に巣食う中、ガークは遙達が見える方向を、名残惜しげに一瞥すると、駆け足で夜道を去っていった。
――――――――
一方、遙は『あの日』から、自分の身に起きた事を全て玲に打ち明けた。
……あの日の夜、河原で母を待っていて、先程の蝙蝠獣人チャドと見知らぬ女性に攫われた事。
目覚めた時には、すでに『獣人』という、人をベースに獣の遺伝子を組み込まれた存在にされていた事。
大企業ゲノム・プロジェクト・カンパニー……通称GPCが、その獣人を裏で造り出している事。
同じ痛みを分け合った仲間達。自分が獣人の中でもキメラ獣人と呼ばれる、稀有な存在である事。
それが切欠で襲い来る刺客……終わりの見えない獣人同士の戦い……死に直面した事も、ヒトを殺めてしまった事も、全て。
そして……
「獣人にされている間の記憶が……無い?」
玲の震えた問いに、遙は静かに頷いた。
「厳密に言えば……大部分が無くなった……って、言えばいいのかな? 皆は獣人化手術中の副作用だって言っていたけれど。
でも……少しずつだけど戻って来ているんだ。その時の……手術中の、記憶が」
遙は一旦言葉を切り、ネクタイを襟元から離して、ブラウスの胸元を止めていたボタンを一つ一つ外し始めた。
四つ程ボタンを外した所で、遙は苦々しい顔立ちになりつつも、ブラウスを中心から左右に引き離し、自分の胸元を曝け出した。
玲が驚く中、露出された遙の鎖骨から胸の上部の肌には、幾つもの赤黒い点滴痕のようなものが、痛々しく浮き上がっている。
「……いくら記憶が消えていても、これだけは消えてないんだ。ずっと、残ってる」
遙の言葉は重く、言い様の無い複雑な感情を含んでいた。遙は尚も震える声で続ける。
「私が気が付いた時には、もう……獣人にされていたんだ。……そして、目覚めた日の夢で、この傷が出来た時の記憶が戻ったんだよ。
……まるで、手術室みたいな所で、私は冷たい寝台に縛り付けられていた。周りには防護服を着た研究員みたいな人の姿が見えたんだ」
と、そこまで言った所で、遙の顔に悲しみではなく、別の表情が張り付いた。……それは『恐怖』
遙は異形へと変わっている両腕で、肩を抱きながら俯く。
「……苦しかった。息も出来ないぐらいに……痛くて……逃げようとしても逃げられなくて……どうしようもなかった。
研究員達は、こっちが苦しんでる事なんて、気付いてないみたいに、訳の分からない事を平然と話していて……」
遙が息を詰まらせ、肩を揺らした。想起された苦痛に、身体中が強張り、喉からは何かを堪えるような小さな息漏れが生じる。
――その時、自分の背中に、ふっと温かいものが触れた気がして、遙は涙で濡れた顔を上げた。
玲が自分のブレザーを脱いで、こちらの背中へと被せている。玲は遙の首周りに腕を回して、小さな、小さな声で話し始めた。
「……ごめん……ごめんね、遙。……そんなに遙が苦しんでいる時に……助けてあげられなくて」
玲は唇を噛んで、遙の胸元の傷に手を当てた。
「遙は……悔しくないの? そんな風に、獣人にされて……命を弄ばれて……」
遙は目を潤ませたまま、玲の手を掴み返す。
「……悔しいよ。……でも、私は、怖かった」
一拍置き、遙は玲に身体を傾ける。
「皆が……私を認めてくれるのかな……って。『人間』として、今まで通りに接してくれるのかが、凄く、怖かった。
もしかして、化け物って呼ばれるんじゃないかって。故郷を追い出されて、二度と、元の生活には戻れないのかな……なんて思ってた」
遙は玲の顔へと、視線を合わせる。遙のその顔には、どこか吹っ切れたような笑顔が浮かんでいた。
「でも、そんな事、無かった。……玲は、私を……人間として、見てくれる? 今まで通りに、接してくれる……かな?」
おずおずと聞いてくる遙に、玲は顔を伏せた。
と、徐々に玲の肩がわなわなと震え始める。遙は何か言おうと、口を開きかけたが――
ごんっ!
「きゃんっ!」
いきなり頭頂部に走った痛みに、遙が子犬のような悲鳴を上げた。
恐る恐る瞼を上げると、玲の憤った顔が目の前へと突きつけられる。
「当たり前じゃない! 馬鹿遙っ!!」
荒々しい玲の宣言に、遙は多いに苦笑した。急速に競りあがってくる安堵感。
迷いの無い玲の一撃に、遙は痛みのためか、目尻に小さな涙を溜めつつも、満更でもない笑みをそっと浮かべたのだった。
――――――――
「……遊びが過ぎたか……ククッ、俺も終わったかね?」
チャドは人の姿に戻り、道の端に座り込んでいた。
全くと言っていいほど、人通りの無い歩道。目の前を照らす赤信号が、不吉にも辺りを真紅に染めている。
そして、その赤い光の奥へ広がる空。月は不気味な黒い雲に隠れ、辺りは一層闇に溶け込んでいた。
その時、急に辺りの波動が歪んだ。
水の中へ波紋が広がるように……徐々にその歪みは酷くなってゆく……
チャドはその波動に、怪訝そうに眉根を寄せると、ゆっくりと顔を上げた。
目の前には、赤信号の光をバックに、血に濡れた白衣を纏った少女――ペルセが立っていた。
逆光の中でも、感情の起伏のない鳶色の瞳が炯々と煌き、その視線は、こちらへと向けられている。
「おいおい、ボロボロじゃねぇか。……クク、体力が無くなる前に、俺を殺ろうってのか?」
チャドは笑いながら聞く。
確かに、ペルセの身体は、纏っているものが元々白衣であった検討も付かない程に赤く染まり、血の気の失せた青白い頬は、夥しい鮮血で濡れていた。
チャドの問いが聞こえていないかのように、ペルセは一度目を伏せると、口を開く。
「ハルカは生きています。これだけ言えば、次の任務は分かる筈です」
チャドの眉が上がる。予想外の彼女の言葉に、彼は聞き返した。
「どうやって、生き延びたんだ? 獣人といえど、ガキだ。それに、奴の友達とやらも一緒に落ちたはずだぜ?」
チャドが思うに、遙が友達を見捨てるようには見えなかった。ならば、自分が犠牲になってでも友の生を優先したはずである。
チャドの少しばかり狼狽したような問いに、ペルセは相変わらず冷厳な顔立ちのまま、抑揚の無い言葉を続ける。
「ハルカのものと思われる、強大な波動の流れが感じられました。何か、彼女の身に起きたのでしょう」
「ほぉ……そりゃ凄い。やっぱり俺らよりも化け物って奴か。……ま、俺の首が繋がった事には変わりないか」
「約束は守って頂きます」
その言葉に、抜けたような風貌でチャドがペルセを見返した。彼女の方は、彼の顔立ちに気分を害したような表情は無く、平然と続ける。
「次は、私もハルカを捕らえる事に集中させて頂きましょう。……次は本気で行かせて頂きます」
チャドは苦笑し、ひらひらと手を振って、その場を去っていった。それを見送ると、ペルセは白い指先で口元を汚している血を拭う。
フェリスが与えた鎖骨や左肩口の傷はすでに血が止まり、白衣の血の染みが広がる様子はない。
彼女がおもむろに見上げた真夜中の空に、月は見えなかった
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